俺が暴走次郎だぜ
アラサーからポテト太郎へのかつあげをはじめる遅れてきたヤンキー。
細い目をした謎多き人物。
好きな食べ物はプロテイン。
趣味はスクワット。
口癖は「五千円ちょうだい!」
30歳も半ばになって、かつあげをするなんて「みっともない」という声も。
なぜ次郎はアラサーになってから、太郎にだけかつあげをするようになったのか。
太郎と次郎とのあいだには何があったのか。
次郎が「暴走次郎」と呼ばれるようになった過去に迫るぞ!
4歳の暴走次郎
4歳の頃に、次郎は太郎の家の近所に引っ越してきた。
次郎は引っ越してきた時のことをよく覚えている。
しかし、太郎はまだ物心がつく前だったのか、同じ4歳なのに次郎が引っ越してきた時のことはよく覚えていない。
太郎の記憶のなかでは、はじめから近所に次郎がいた。
そして、近所なので自然と遊ぶようになっていた。
5歳の暴走次郎
次郎は、まわりの子どもより年上に見られることが多かった。
5歳のときに8歳ぐらいに間違われていた。
次郎は、何事にもとても不器用だったけど、その分、真面目な性格。
次郎は太郎と違い、運動はできないし、勉強はできないし、性格も暗くて無口だった。
そんな次郎の友達は1人だけ、幼なじみの太郎だけだった。
でも、太郎とは自然と仲良く遊べた。
5歳の頃、太郎と次郎はよく一緒に砂場遊びをしていた。
2人は砂と泥まみれになりながら、よく遊んでいた。
次郎は、魚屋をしている太郎の家にもよく遊びに行った。
太郎のお父さんやお母さんとも、次郎は顔見知りだった。
でも、太郎は次郎の家に遊びに行ったことはなかった。
「遊びに行きたい」と太郎が言っても、
「うちの家は汚いし、つまらないから」と次郎は断っていた。
次郎の家に遊びに行きたいよ
うちは汚いし、つまらないから・・・
10歳の暴走次郎
相変わらず、太郎と次郎は同じ学校に行っていた。
10歳になっても、次郎は不器用なままで、やっぱり運動も、勉強も苦手なままだった。
そのせいで自分に自信がもてずに、性格も暗いままだった。
太郎は、学校ではすっかり人気者だった。
太郎と次郎は、まるで違うようだったが、それでも太郎は次郎と仲良く遊んでくれた。
11歳の暴走次郎
次郎は、太郎と一緒に水泳のスポーツクラブに入った。
太郎はスポーツ万能だったから、泳ぐのもとても速かった。
次郎は、いつまでたってもまったく泳げなかった。
なかなか上達しない次郎を尻目に、太郎はどんどん上達していき、上級生よりも速く泳げるようになっていく。
太郎は、上級生をさしおき水泳クラブのリレーメンバーに選ばれた。
県大会の4人チームで戦う400メートルメドレーリレーでは、惜しくも2位だった。
太郎が原因ではなかったが、2位では全国大会に出られなかった。
大会が終わって数日後、太郎は水泳のリレーメンバーを取られた上級生の佐助に呼び出された。
次郎は心配になり、こっそりと二人のあとをついていった。
「ポテト太郎!お前のせいで全国大会に出られねーんだ。謝れ」
佐助は言うと、太郎を蹴った。
ごめんなさい
太郎はじっと我慢して謝った。
それを横目でチラチラと見る次郎。
「お前は魚屋なんだから、プールじゃなくて海か川で泳いでろよ!
魚くせーお前がいると、プールが汚れるんだよ!プールは人間が泳ぐ場所だ」
佐助がそう言った瞬間・・・
お前が謝れ
陰に隠れていた次郎は、涙を浮かべながら佐助に殴りかかった。
次郎はこれまでケンカをしたことがなかったのに、上級生の佐助をボコボコにしてしまった。
佐助はスポーツクラブでも体格のいいほうで、太郎や次郎の同級生からは怖がられていた先輩だった。
その佐助を、普段はおとなしい次郎がボコボコにしてしまった噂はあっという間に広まった。
次郎は、もの静かだけど、怒らせると歯止めがきかない暴走機関車のようだと言われるようになった。
こうして、次郎はいつしか「暴走次郎」と呼ばれるようになったのだった。