ボールを持つ少女

スポーツテスト(体力・運動能力調査)の種目の中で、唯一の投擲(とうてき)種目がソフトボール・ハンドボール投げです。

遠くまでボールを投げるという基本運動の一つです。

人間が狩猟をしていた頃は、石や槍など動物を攻撃するために物を投げることもあったことを思うと、やはり人間にとって、とても大事な動作です。

スポーツテストでは、小学生はソフトボール投げ、中学生・高校生はハンドボール投げを行います。

私は小さな頃、少年野球チームで野球をしていました。

なので、ボールを投げることはそれほど苦手ではなかったのですが、ソフトボール投げやハンドボール投げはあまり得意ではなかったです。

何が難しかったかといえば、ボールが大きいので掴みづらくて、それが投げにくい原因でした。

特に、ハンドボールはけっこう大きいので、遠くまで投げるのは難しかったです。

どうしたら、スポーツテストのソフトボール投げ・ハンドボール投げで良い記録を出せるのでしょうか?

こんなの才能だって、諦めていませんか?

そんなことはありません。ちゃんとボールを遠くまで投げられるコツがあるんですよ。

いくつもコツを紹介するので、そのコツをおさえて投げれば、すぐに数mくらいなら距離を伸ばせます。

ソフトボール投げ・ハンドボール投げの投げ方のルール

まずは、ルールをチェックしましょう。

どちらも直径2mの円の中から投げます。

投げるときには、この円の中から出てはいけません。(線を踏むのもダメです)

円の中であれば、自由に動けます。

ボールは、直径2mの円の中心から30度の範囲に投げなければなりません。

ボールが着地した地点が、30度の範囲内に入っていなければ、記録は無効になります。

投げるときに円の中から出てしまった場合も、記録なしです。

記録はメートル単位で計測します。

メートル未満は切り捨てます。

たとえば、5m10cmは記録5mになりますし、5m90cmを投げても記録5mになります。

2回投げて、良い方を記録とします。

ソフトボール投げ・ハンドボール投げの平均記録

どれくらい投げることができると、良い記録と言えるのでしょうか。

平均記録が気になるところですよね。

文部科学省の体力・運動能力調査の平成29年度の統計結果によると、次のとおりです。

ソフトボール投げ小学生の平均記録

男子 女子
1年生 8.62m 5.80m
2年生 12.36m 7.71m
3年生 15.94m 9.94m
4年生 20.02m 11.90m
5年生 23.51m 14.40m
6年生 26.81m 16.33m

ハンドボール投げ中学生・高校生の平均記録

男子 女子
中学1年生 18.29m 12.16m
中学2年生 21.29m 13.35m
中学3年生 23.82m 14.43m
高校1年生 24.14m 13.65m
高校2年生 25.54m 14.35m
高校3年生 27.00m 14.79m

ソフトボール投げ・ハンドボール投げの投げ方のコツとフォーム

ボールを投げる少年

ボールを遠くまで投げるためには、具体的には二つの数字が大事になります。

一つは、ボールが手から離れた時の初速(スピード)を上げること。

もう一つは、最も遠くまで飛ぶ角度で投げること。

物理的な数字でいうと、関係するのはこの二つだけです。

体を柔らかく使うため、準備運動をしっかり行う

ボールを投げる動作は、肩や腕だけを使っていると思われがちですが、下半身の力を上手に使って投げることで遠くに投げられます。

体の回転する力をボールに伝えることが大事です。

なので、筋肉を柔らかくして、体の回転を大きくすることでより遠くに投げられるようになります。

腰やお尻など体幹部分の柔軟性、足の柔軟性も非常に大事です。

腰やお尻などの体幹部分、股関節など、筋肉も関節も全身をしっかり準備運動しましょう。

特に、肩、肘、手首は入念に回して柔らかくしておきましょう。

体が温まってきたら、実際にボールを軽く投げておきます。

徐々に力を入れて、投げ込んでおきましょう。

本番でいきなり力いっぱいに投げると、肩を壊すことがよくあります。

2mの円の中でステップして反動をつける

直径2mの円から出てはいけませんが、逆に言うと、この中なら自由に動いていいのです。

オリンピックを見ていると、砲丸投げの選手は狭いサークルの中でもしっかりステップを踏んで砲丸を投げています。

ソフトボール投げ、ハンドボール投げでも、この2mの円を上手に使って、ステップをつけたほうが遠くにボールを投げられます。

斜め上30~35度の角度にボールを投げる

ボールを投げる時は、斜め30~35度上の角度に向けて、ボールを投げます。

45度の角度で投げるのが最も遠くに投げられるのではと考える方もいるかもしれませんが、これは間違いです。

確かに、高校の物理で45度の角度でボールを投げると一番遠くまで投げられるという計算がありました。

ただ、これは真空状態での計算です。

真空状態だと、45度の角度に向けてボールを投げるのが一番遠くまで投げられる計算になります。

実際に私たちがボールを投げる時は、空気抵抗を受けますし、ボールの回転もあります。

そのため、45度の角度でボールを投げると、最も遠くまで飛ぶわけではありません。

じゃあ、何度くらいで投げるのが一番遠くに投げられるのかが気になりますよね。

45度よりは、低い角度でボールを投げなければなりません。

初速やボールの回転によって多少変わりますが、30度~35度の角度でボールを投げると一番遠くまで投げられます。

45度で投げるのが一番遠くまで飛ぶと思っていた人からすると、だいぶ角度が小さくなりました。

高く投げる必要はなくなったように感じるかもしれませんが、この角度でも上に投げる感覚で投げないと、30度にはなかなかなりません。

多くの人が遠投をすると、もっと低い角度になっています。(ハンドボール投げでは、ボールがしっかり握れず、指にかかっていないとボールが高くなりがちではありますが)

とにかく遠投でベストな角度は、30度~35度と覚えておきましょう。

ソフトボール投げ、ハンドボール投げの正しい投げ方・フォーム

利き腕が右手の人を例にして具体的にいうと、まずは左足を浮かして、右足に全体重をしっかりかけます。

ボールを投げる方向である前方の斜め上とは真逆の側に、体を少し沈みこめます。

左肩はまっすぐ前ではなく、斜め上方に向けます。(ボールを投げる方向です。)

そこから、左足を前に踏み込んで、体重を一気に左足にかけていきます。

体重移動を意識して、この体重移動の力をボールに伝えましょう。

物理で、「エネルギー=重さ×速度」という公式があります。

重いものが速く動けば、エネルギーが大きくなるので、エネルギーが伝わるボールも速く飛んでいきます。

少し沈み込めていた体が回転して伸び上がっていく方向が、ほぼボールを投げる方向になるようにします。

おそらく一度読んだだけではできないと思いますが、全身を上手に使って、体の回転をボールに伝える理想の投げ方・フォームを伝えます。

踏み込んでいく左足が支点になって、まずはグッと足、下半身が回転していきます。

そして下半身の回転が伝わって、しなるように少し遅れて腰が回転していきます。

腰の回転がさらに上半身に伝わっていき、腰から少し遅れて上半身が回転していきます。

上半身の回転がさらに肩に伝わり、上半身から少し遅れて肩が回転していきます。

肩の回転がさらに肘に伝わり、肩から少し遅れて肘が回転していきます。

肘の回転がさらに手首に伝わり、肘から少し遅れて手首が回転していきます。

最後に手首の回転する力も含めて、すべての力を指先からボールに伝えます。

体を回転させながら、ムチがしなるように力を増幅していき、最後にその力をボールに伝えるのが理想です。

肘は肩より高く上げて投げるほうがいいです。

足腰・下半身から、上半身へと伝わってきた力をそのままの流れで伝えていくほうがスムーズだからです。

この投げるフォーム、いい例えではないかもしれませんが、私は津波にも少し似ている気がします。

陸から遠い沖合から徐々に波が伝わってきて、近づいてくるに従い少しずつパワーが増幅していき、陸地に到達する時点で最大になって押し寄せてくる。

ずっと野球をしてきた私が、スポーツニュースなどで専門家の話を聞いていると、速いボールを投げる理想のフォームがこういうものです。

ボールを速く投げる理想のフォームですが、ボールを遠くに投げるのも初速が速ければ速いほど遠くまで飛ぶので同じです。

ちなみにですが、野球でいうと、バッティングでボールを強く打つ理想のフォームもこの考え方と同じです。

下半身から腰へ、腰から肩へ、肩から肘へ、肘から手首へ、手首からボールへとすべての力が連動して伝わっていくことで大きな力になります。

ソフトボール、ハンドボールが手から離れる位置は、後方で上方

低い位置にボールを投げる時は、なるべくボールを長く持って、体の前のほうで離すのが理想です。

ただ、遠投ではボールを30度~35度の角度で投げなければならないので、ボールが手から離れる位置、リリースポイントはまっすぐ前に投げる時よりも後ろで、かつ上の方になります。

ただ、この時も腕が伸びきったところでボールを離すのが理想なのは変わりません。

指先に力を入れて投げる(※親指と小指も)

実は、この指先の使い方が大事です。

特に、ボールが大きいハンドボール投げでは重要です。

私は野球をしていたと伝えましたが、野球ではボールは親指と人差し指と中指を使って投げるのが基本です。

薬指と小指はたたんでしまっています。

親指も添えて支えているだけで、ボールに力を伝えるのは人差し指と中指の役目になります。

ソフトボールも少し大きいので、野球とまったく同じボールの握り方ができるわけではありませんが、ボールへの力の伝え方は人差し指と中指を使い、ほとんど同じ感覚でできます。

私がハンドボール投げがあまり得意でなかったのは、この指の使い方が野球とは少し違っていたからだと思います。

ハンドボールは大きいので、しっかり握って固定することが重要です。

ボールが固定されていないと、しっかり力を伝えることができません。

ボールが固定されていないと、「のれんに腕押し」といった感じで、力が逃げてしまうのです。

この大きなボールは、親指の指先と小指の指先に力を込めて、しっかり固定するのがコツなのです。

これは野球部員にとっては常識ではないですが、ハンドボール部員にとっては常識なんですって。体力テストの時に、知っていたかった!

野球でも、ハンドボールでも速いボールを投げるための体の使い方はほぼ同じですが、ボールの大きさが違うので、ボールの握り方に決定的な違いがあったのです。

ハンドボール投げでは、すべての指先に力を込めるようにします。

その中でも、親指と小指はボールを固定するための役割、そして、ボールと手の平が最後に離れる瞬間、最後までボールに触れているのは人差し指、中指、薬指の指先で、その指先でしっかり力を伝えます。

3本の中でも、特に人差し指と中指が力を伝えるのに重要なのは、野球と同じです。

2本の指先がしっかりボールにかかっていないと、力がボールに伝わりません。

指先の使い方、けっこう難しいので簡単にまとめておきます。

親指と小指の指先でボールをしっかり固定して、力は人差し指と中指の指先で伝える感覚です。

この指先の使い方は、非常に重要です。

ボールを投げるとき肩や腕が力んではいけない

「指先に力を入れてボールを持ちましょう」というと、ハンドボールはボールが大きいので、肩や腕にまで力が入ってしまいがちです。

他の部分にまで、余計な力が入ると動きが固くなってしまいます。

下半身からの力をムチのようにしならせて、増幅しながら伝えていくのに、余計な力が入って固くなっているところがあると、そこでエネルギーが分断されてしまいます。

肩や腕の力は抜きましょう。力を込めるのは指先だけです。

ボールを離すとき手首のスナップを利かせる

肩や肘などの力は使えているのに、意外と手首の力を使えていない人がいます。

ボールを手から離すときに、しっかりと手首も後ろから前へと動かしてボールに力を伝えましょう。

投げたボールがきれいな縦回転をしている

投げたボールはきれいない縦回転をしているほうが、ボールに浮力が働き、すぐに落ちてしまわないので、遠くまで飛びます。

さきほど指先を使ってボールを投げる方法をお伝えしましたが、しっかり指先を使えていると、ボールを離すときに、人差し指、中指の指先がしっかりボールにかかって、スナップを利かせることができるので、自然とボールは縦回転になるはずです。

投げる時に利き腕じゃないほうの腕を体の方に引く

利き腕が前に出ていく時に、反対の腕を力強く体のほうに引きます。

そうすると、より体の回転が速くなります。

利き腕の側の体は前方へと回転していき、利き腕ではない側は後方へと回転することで、全体の回転速度が上がります。

私もやったことあるのですが、利き腕の回転がかなり速くなるように感じられます。

しっかり準備運動してからでないと、肘への負担が大きいので気をつけてください。

ソフトボール投げ、ハンドボール投げのコツを紹介してきました。

ボールを投げるという動作だけでも、コツはたくさんあります。

筋力をつけるためには、あらかじめ準備として筋トレをしておく必要がありますが、ここに書いたフォームを矯正する方法なら、今すぐボールを遠くに投げられるようになります。

ここに挙げたコツを意識して、スポーツテストに挑んでみてください。

きっとこれまでよりずっとボールが遠くに投げられるはずです。

スポーツテストで、他の種目も記録を上げたい人はこちらの記事を読んでみてください。

50m走の記録を上げたい人は、

短距離走を速く走るコツ!足が速くなる方法・走り方とフォーム

 

立ち幅跳びの記録を上げたい人は、

ジャンプ力を上げる方法!跳躍力アップに筋トレより大事なコツ

高く跳べるようになる方法として書いていますが、体の使い方は同じです。

二つとも読んですぐに効果の出るコツを紹介しています。

スポーツテストの成績を上げたい人は必読です。